いろはに刀剣第二弾と、日本刀の基礎知識を学べるもの
奈良県明日香村で開催された「歴史おもしろフェスティバル」の中の「いろはに刀剣」に行ってきました。
グッズとトークショー、こんのすけ目的で早めに行ったらすでに山のような人で、一緒に行った螢さんとだんだん無言になってくる状態(笑)
とりあえず見た刀剣やグッズのメモと、講演会メモのような書き散らしを…
グッズ
トートバッグと柿の葉寿司のセット、クリアファイル、キャラクターカードの三点が用意されてました。
トートバッグと柿の葉寿司は到着(10時前)の時点で無理でした。クリアファイルは無事ゲット出来たし、キャラクターカードは割りと余っていた模様です。とくにアナウンスがあった様子もないし、後から来た人は気づかなかったのかな?
トートバッグのみの受注生産をする、というアナウンスがあったので柿の葉寿司は諦めてトートバッグのみを受け付けてもらいました。
クリアファイルは通常立ち絵だけどまぁ記念に…と思いきや
うしろの鹿に「ぶふぉっ」と噴きました。奈良の鹿は容赦のないことで有名だから、きっと袴とか刀とか飛び出してる奴(なんていうんだこのパーツ…)をむしゃあってされる。がんばれパッパ。
常に行列ができてるパネル。立ち絵だけかと思いきや抜刀絵のパネルもありました!!石切丸さんでっけぇ!!出てきた時「きゃー!」という黄色い歓声に囲まれ人が群がり、もはやアイドル(原義的な意味で)
「もうこれ刀剣乱舞石切丸の公式イベントだろ?」と思うくらい石切丸でした。
石切劔箭神社から石切丸(これは太刀です)も来てるし。
展示されていたもの
・日本刀ができるまでの工程
日本刀の工程は何回見ても「こうやってああやってこうなって日本刀ができるのかー。なるほど!分からん!」という印象しかありません。先人たちの知恵と伝えていく方々がすごすぎる。
・刀型
三日月宗近、鶴丸国永、石切丸、一期一振、へし切り長谷部の五振り。
「鶴丸の写真取れるの!?」とか言われてましたが、刀型というのは「鉄の板を刀の形に切り、アルミテープを貼ってマジックで鎬や刃文や銘を書いたもの」です。写しやレプリカですらありません。形や長さの勉強などに用いられる道具みたいです。
我々は「一期一振わりとごついなー」とか「石切丸さんほっそ!」とかを見比べる感じかな…?
・七支刀(復元)
河内國平刀匠が復元に成功したものです。「刀……???」と思ったら鋳型を作って作成されたものだそうで。詳細は後述
・石切丸(太刀)小狐丸(小太刀)(石切劔箭神社所蔵)
ゲームだと大太刀の石切丸は太刀、太刀の小狐丸は小太刀です。
二振りとも「平安時代の太刀」って感じの優美で繊細、艶やかな地鉄で「しゅっとしてはるわ~」ってほわほわしてました。
あれをどうしたらあんなインテリやくざと物理で殴るキャラになるのか、いまだに分からん。
複数ある「石切丸という名前の刀」「小狐丸をいう名前の刀」の伝承や創作物、実在する刀剣をまとめてゲームキャラにカスタマイズしたもので、イコールではないからです。でも元ネタの一つだから見るのは楽しい。
・蕨手刀、毛抜形太刀(復元、個人蔵)
日本刀が今の姿になる前の形の刀剣。だいたい奈良時代~平安中期くらいのもののようです。
柄というか握る部分が蕨のような形だから「蕨手」刀、毛抜きのような形に穴が抜けているから(衝撃吸収用と考えられているそうです)「毛抜形」太刀というそうな。
蕨手刀は幅が広くて「ナタだろこれ」って印象でした。毛抜形太刀はちょっと日本刀っぽい。
・小烏丸(写し、廣瀬大社所蔵)
何回見ても意味がわからない刀剣……なんで途中まで両刃でそこから片刃になるのか。詳細は後述。
長守の刀は薙刀直し特有の「日本刀なんだけど日本刀っぽくない」形状に南北朝時代のでかい&ごつい&鋒長い&厚いの役満刀剣。「絶対にをぶちのめす」見た目で、武闘派!って感じでした。備前はこんなのしかないのか。
村正は「徳川を呪う妖刀」として有名なせいか、村の字が削られ、その後村の字を再度打たれる、という「お前…色々あったんだな…」って銘でした。
平造りだけど重ねは厚いし寸延びで長いし、「……短刀?」って印象。村正は妖刀と言われるだけあって、独特の禍々しさ(褒めてる)がありますね。
なお、村正は「徳川を呪う」とか言われてるし有名な逸話はいっぱいあるけど、村正は桑名で刀を作っていたので三河からの交通の便がよく、三河では村正作の刀をよく利用していたってだけみたいです。三河武士が使用していたら、そりゃー切腹に使われたり、襲われる時に使われる村正の刀もあるだろう。
・吉平(個人蔵)
福岡一文字派の太刀は「this is 日本刀」って形で好きです。今回展示されていたものも穏やかだけどけして油断ならない印象でした。
ちなみに刀剣展示の列がものすごく、ゆるキャラショーもこんのすけも見逃しました(ノω`)
河内國平氏&徳田誠志氏トークショー
刀匠と宮内庁の職員による講演…と書くとお硬い感じですが、「七支刀の再現にあたって分かったこと、当時の情勢から考えられる日本の立ち位置」「天皇家所有の刀(御物)」を面白おかしく、けれどもしっかりとした知識や経験などの地盤あってのトークショーでした。
・七支刀
教科書で見るやつ。天使禁猟区で覚えたって人は仲間ですね!(゚∀゚)
3世紀までは「魏志倭人伝」の世界、5世紀からは「大和朝廷」の世界になるので、4世紀は空白の時代と言われています。七支刀はその4世紀を知る貴重な手がかり。
他の国や地域でも見られず、刻まれた文字が非常に多い七支刀が何故、どうやって生まれたのか?を学術的な立場と鍛冶師の立場から見ての再現方法や文字の読み解き方、非常におもしろかったです。
なお、七支刀には「継ぎ目」がなく、形状もカクカクしていないレンズ型。
とんてんかんと鍛冶で生まれたものではなく、レントゲン照射や河内刀匠の様々な経験から「これは鋳造だ」と結論づけて作ったものの、何度も失敗した様子。鋳型から抜くタイミングが悪いと割れてしまうとのこと。
「ちょっと失敗した」って、気軽な調子で話されてましたが、相当な苦労や苦心があったはず…
「百兵にも勝る、百回鍛えた鉄から生まれた刀。後世に伝えよ(大意)」の「百回鍛えた」の解釈が今まで「鍛錬」だと思われていたが「精錬」ではないか…と気づき、型を造り鉄を流し、再現に成功したけど、何度も失敗したそうです。
現代最高峰の刀匠を持ってしても失敗する七支刀を生み出した4世紀の製鉄技術、どうなってたんでしょうね…
当時の東アジアの情勢から、日本(倭)が東アジアの一国として認められ、政治的に利用され…という徳田氏の話も興味深かったです。
すごい国からすごいものを贈られるのには理由がある。
・小烏丸(というか御物)
このタイミングで通るレンタルサイクルの集団。なんだったんだろう…爆笑をかっさらいました。
御物とは天皇個人の持ち物の事で、いわば「個人蔵」
なお、「国有物」になると国のもので、三の丸尚蔵館で展示される機会があるそうです。
御物でも展示される機会がまったく無いわけではなく、以前天皇即位20年の時に東京国立博物館で展示したとのこと。次の機会は即位30周年?とのこと。
二年後、いちにい、鶴丸、鶯丸、平野の展示がある…かも?
天皇家は「文武」でいうところの「文」の家なので、刀剣の所持数は少ないそうです。
天皇家が所持している刀剣は刀剣好きの天皇、後鳥羽上皇が作った刀(菊御作)、その他、大名家から献上された刀。
鶴丸国永、平野藤四郎、鬼丸国綱の写真などのまさかの御物祭りでした。二年後に展示があったら行くでぇ…!
昭和8年12月に献上された光忠。当時の上流階級では、男の子が生まれたら刀剣を贈る習慣があったようです。見たい刀ががんがん増えていくぞ…
やっと小烏丸の紹介。小烏丸は桓武天皇の前に止まった烏が翼を広げたら刀が落とされた刀剣で、平将門討伐の際、下賜されたそうです。
うそくせぇ伝説のある刀は、明治期に献上された刀で、10世紀ごろに大和国の天国(あまくに)が作ったとされる刀。
焼入れ前の形が非常に美しく、焼入れが非常に難しい刀だそう。
土置きからの焼入れは、土を置くことで熱の通り方が変わり、厚く置かれたところ(温度が低い)と薄く置かれたところ(温度が高い)の温度差によって鉄の質が変わり、反りが生まれるのですが、鋒だけ両刃のため、反りが生まれない。焼入れに失敗すると割れるという、非常に難しい形だそうです。
現代の名工から「美しく難しい刀」と言われる小烏丸……ロマンを感じます。
本物が見たいので、ご即位30週年記念の展示が楽しみです。
この後刀の作り方や質問コーナーなどがありました。ここで私の疑問だった「西洋鉄で日本刀作ったらなんかすごいの作れない?」という事を質問される方がおられました。
なお、西洋鉄と和鉄では鉄に含まれる成分が違うため、千年も残る刀はないのでおそらくいい刀は生まれないのでは…とのこと。
この辺、私の脳みそがキャパオーバーしていたので記憶が曖昧です…とりあえず刀として長持ちしないんだなってことだけはわかりました…
ここで刀鍛冶の道具を持つ機会があったのでチャレンジしました!(゚∀゚)
持てたら刀鍛冶として手に職を持てるチャンス…!
なんて甘いものではなかった。
持てるけど非常に重いものなので「正確に、平らに、繰り返し打つ」ということは私には無理でした(ノ∀`)
女性の刀工がいないわけだよ!と思ってたら、一人前の刀工としての免許(資格?)試験を、今年初めて女性の方が受けているそうです。もしかしたら刀剣界初の女性刀工が生まれるかもしれない…!
「日本刀?えっと、正宗とか?」というレベルの人間がうっかり刀剣乱舞というゲームにはまり、日本刀にハマり、今では刃文や地鉄、形を見ようとしているのだから何がきっかけで人生転ぶか分かりませんね。
まだまだ初心者(というか永久に初心者だと思う)ですが、日本刀ブームはまだまだ私の中では続きそうです。
日本刀の基礎知識本
で、「日本刀って、えっと、正宗とか?虎徹とか?」みたいなレベルの人間が「日本刀を知るための本」はよく話題になるしいろんな本がありますが、正直言ってこの本一冊があれば十分かなと思います。
日本刀の種類、歴史、構造、各部の詳細な解説、彫り物の種類から銘の打ち方、著名な産地の特徴や鑑定のやり方まで網羅しています。
日本刀ハンドブック [ 杉浦良幸 ]
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とりあえず日本刀の基礎知識の資料としては、これ一冊あれば十分かなと。下手に「審神者必読」みたいな帯の本を何冊も買って読むより、こちらをおすすめします
日本刀の作り方、拵えの作り方や下げ緒の巻き方などの「日本刀のビジュアル」資料はこの二冊がいい感じです。
写真で覚える日本刀の基礎知識[書籍]【あす楽対応】【あす楽_土曜営業】【あす楽_日曜営業】
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写真で覚える日本刀の基礎知識2[書籍]【あす楽対応】【あす楽_土曜営業】【あす楽_日曜営業】
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「これ、どうなってんの?」「このキャラだとどういう下げ緒になるんだろう…」の資料になってます。忠実に再現しようと思ったら柄巻師とか鞘師とか専門職の分野になるので、あくまでも資料です。
「天下五剣や三名槍、信長が所有していた刀について知りたい!」となると、正直いっぱいあるしどれがいい、というものは思い当たりません。買いだしたらキリがない…
本物を見るのが一番ですね!(投げた