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残すことと見つけたり

見たり聞いたりしたコンテンツを覚えておくための、備忘録ブログです

京都国立博物館土曜講座「刀剣を楽しむー名物刀を中心にー」

学芸員さんのお話を楽しみに、行ってまいりました。

過去何度か刀剣の講座は開いたけれど、20人程度、それも顔見知りという講座ワースト記録を保持していたそうですが、今回は満員御礼。刀剣乱舞の人気を実感しますね。

なお、肝心の刀剣展示ですが、着いた時点で300分待ち、講座を聞いて、あれこれ展示を見てもういいかな、と思って見たら「80分待ちで最前列では見られないかも…それでもよければ…」と言われたので、後ろから見てきました…残念。

以下は自分のメモと記憶、あといろんな方のツイート等を継ぎ接ぎした、自分なりのまとめになります。
メモに毛が生えたようなレポートとも呼べないシロモノですが、うまく文章化するのに四苦八苦するぐらいなら、そのまま出そうと思って公開しました。そうしないと今後、メモとか書かなくなってしまいそうで…

読みぐるしいとは思いますが、学芸員さんの熱量が伝わればなーと思います。

 

 

美術史とは、モノを通して歴史を紐解くこと。
✕モノの歴史
◯モノから歴史を語る

「この刀はこういう人が作ってこういう人が所有してて」というのは美術史ではないそうです。「この刀はこういう形だからこういう人が使ってて、この記録からこの人が持ってたと思われる」って感じでしょうか。
「モノ」が語るから物語、というたまーに使われる刀剣乱舞のコピーはこの辺からきてるのだろうか…
審神者の皆様なら、感覚的に分かるかと。

刀剣は金属工芸の一つ

 学芸員さんは刀剣と茶釜の研究をしてるそうです。どっちも金属だな。

型式学(考古学など)
人工物の社会、変化、秩序を分類する
地理的要因などを探る(海のないところで塩はできない、鉄のないところで刀は作れない)

言われれば確かに、と思った。

様式論(美術史)
◯◯風、を分類していく。
「◯◯伝」という言い方は明治以降の言い方で、正しくないのでやめたい。

とはいえすっかり定着してるしなー。この辺はちょっとずつ変わっていくことなんでしょうか。

日本刀とは(美術史的に言うと日本刀様式)

  • 刃と茎が一つになっている。
  • 立体的な構造
  • 片刃で反りがある
  • 刀身と拵えがある

今回の展示は湿度45%乾いている。拵えは65%が適切なので、今回は拵えの展示はなし
二つ銘則宗は拵えが重要文化財
折り返し鍛錬は日本等特有のものではない。ローマ時代に用いられている。

明治時代にサミュエル・ビング(美術商。後に日本刀を海外に日本刀を販売した人)がフランス陸軍工廠に「比較するから剣を送って!(意訳)」と依頼するが、「んなボロい剣とうちの剣を比較しようとすんじゃねぇ(意訳)」。ただ「研磨はすごい」
日本刀の鉄は海が近いため鉄に不純物が多く、切れ味を出すために折り返し鍛錬などの手間が必要。そのままだとダメだから手間をかけ、結果、素晴らしい作品が生まれた。

「え、じゃあ純度の高い海外の鉄を使って日本刀を使ったらどうなるんだろう…」と思ったけど、どうなんでしょう。

極東までフランス陸軍最新の剣を持ってこさせようとしたサミュエル・ビングさん、気持ちは分かるけど落ち着こう…

焼き入れは固くしたいところに土を置く。

焼入れは柔らかくしたいところに厚く、固くしたいところの薄く、塩分などを含んだ土を置く。急冷することで塩などから窒素とか水素とかを産み、うまいこと刃紋が生まれる。
なお、私達が見ている刃紋は研ぎの「刃取り」で生まれるもの。いわば厚化粧で、本来の刃紋とは違う。いわばデカ目ナチュラルメイク。
近年は素の刃紋がいい、という風潮があるが、印象がまるで違うので、研ぎの世界はまだ派手なのが好まれてる(美人が朝起きたら別人だった、という状態になる。うちの子はもっと綺麗!という持ち主さんも多いそうで…当然か)

1/19追記 焼き入れの説明、真逆でした。

「そうか、とうらぶキャラってデカ目ナチュラルメイクとかして、ものすごい厚化粧なんだ…」と思ってしまった。

上下左右、よーく見たら本来の刃文が見えるそうです。刀を見る時はじっっっくり見てみましょう!そして化粧を見破ろう!(ひどい)


髭切と膝丸

10世紀に渡来人に打たせ、八幡菩薩の加護を得た刀は源氏の重宝となる…が、同時代の文字資料に記載がない。
軍記物はラノベ、琵琶法師はメディアミックス。一次資料としての価値はない(うん、知ってた)
底本として有名な日本刀名鑑に南北朝以前の資料がない。平安時代、鎌倉時代の資料はゼロ。

なんか意外でした。平安刀とかあるから、資料がなんかあるもんだとばかり…
なおこの日本刀名鑑、編者本人が「出来悪いから。後世の人間がもっといい資料にしてね(意訳)」って書いているのですが、現在第3稿でストップして、これが基礎資料とされているのが現状だそうです…。

政治色の強い刀。
所有者に「満仲の子」という正統性を担保する。武家の棟梁としての箔付けの意味合い。
舶来の技師、神仏の加護を得たという逸話→神聖付与
試斬説話。性能実験(JIS規格通ったようなもの)
時代が下がると超常性が付与される(鬼とか、幽霊とか、燭台とか!)
血族の保障や正統性の喧伝に用いられた。
本人にカリスマ性、実力があれば不必要だが、揺らぐため「モノ」と「ヒト」の主客転倒が起こる。
「この人が持ってるすごいモノ」から「すごいモノを持ってるからこの人はすごい」になってしまう。

…あれ、なんかよく聞く話ですね?

粟田口の系図なんかも「この刀を作った人はすごいんだぜ!」とばかりにどんどん盛られていて、最初の資料では六つ子みたいなざっくりした系図に子供だか弟子だかがいて…って感じなのに、どんどん盛られ、後世の資料では間に娘がいたことになり、享年が記載され…と「原作が少ないから二次創作物で設定が盛られ、薄い本が暑くなる」ような状態になってる、との事。審神者を把握しすぎです、学芸員さん…

あと、粟田口に限らず、刀工の系図でよく使われる「◯◯派」は、「family」ではなく「school」と考えるのが適切だそうです。

「粟田口」という「家族」というより、「粟田口」で日本刀の造り方を学ぶ「専門学校」って感じでしょうか。

後鳥羽上皇の菊御作

草薙剣が失われたため、威信材が欠如。権威欠落の恐れがあったため、神器を必要とした。

音声ガイドで「三種の神器が失われた状態で即位した刀剣コンプレックス」ってあったし(分かりやすくざっくりとした言葉を選んだみたいです)「あー、オタが高じて作っちゃったか…」と思ってたら、そんな甘っちょろい話じゃありませんでした。三種の神器の神聖性に匹敵するような刀剣を必要として、その刀で地盤を固めたかったのですね…。失礼しました(御所に向かって土下座)

なお、菊御作の菊の模様は12弁。13振り現存して4振り確認したが、12弁。16弁ではない。

……地味にびっくりしました。思い込みって怖い。

髭切(太刀 銘国綱

重文指定は「安綱」とあるが、ルール違反。真贋関係なく打たれた銘をそのまま登録すべきだが、明治時代に安を国に改ざんしたから安綱、と天覧で説明したため重要文化財としての名前は「銘安綱」になってるややこしい刀。これは登録の重大なルール違反だそうです。「…で、なんて刀なの?」とはてなマークが飛び交う刀になっちゃってる…。
ただし国綱、安綱、安家(安綱の子とも弟子とも言われる)…などとは銘の位置、力強さ、ルールが違う。
童子切安綱、鬼丸国綱とくらべても銘が全然違う。

13世紀に打たれたものではないか、とする説もあり。
現在、基礎資料の修正が最重要課題。
鉄はなんとでも改変できるため、見極めが難しい。
確実に11世紀に遡れる日本刀は存在しない。

吉原弘道氏が書誌学観点から資料の錯簡(ページの組み換え)を発見。2011年に発表。
何故そんなことをしたのか?研究が必要。研究費ぷりーず!
最古の刀工は12世紀下期くらいでは、と言われてる。

13世紀に作られたとすると、源氏の棟梁の刀、という辻褄が合わないが、伝承の否定は、否定資料が必要なので否定はしない。
極めもの、伝承を受け入れられるキャパシティのある素晴らしい作品として国綱の銘を入れられた、と考えられる。…が、なんでこんなことをしたのかは研究できてない。研究費ぷりーず!

こういう「いやこれ国綱ってあるし国綱の作品に匹敵する素晴らしいモノだけど、国綱の銘とは違うよね?」というものは「極銘(きわみめい)」というそうです。
どこかで誰かが「国綱」ってよわっち…繊細な銘を入れたようです。

国綱の刀にふさわしい作品を誰が作ったのか、今後の研究が待たれます。

膝丸

□忠 □は「字があったと思うけど失われて読めない」という意味。極めて高い見識。

「分からない事を分からないという言う勇気ある決断」だそうです。つーかマジで読めんのですが。完全に削れてる。

「多分、この文字」という時は□に文字を入れて「多分、この字」と表現する。
銘が失われたのは共金を使い、鉄製の鎺を用い、削れてしまったのではないか。鉄製の鎺は刀身を痛める。

違う性質の金属をくっつけてると、単品で置いておくより腐食が進んでしまうそうです。金属製のものを直す時は気をつけましょう。

春日大社奉納の長船則光は箱、袋、拵え、刀身の四品が残ったタイムカプセルのようなもの。
それにも鉄の鎺が使われ、同じような削れが見られる。

昔の鎺は銅製が多く、今は金や銀、銅など「鉄より柔らかい金属」を用いるのが一般的なようです。銘や刀身がごりっと削れたら悲惨ですもんね…

近忠作が妥当とされてるが、近忠に現存作がないため、不確定。今後変わるかもしれない。

伝承を仮託することで、主客転倒が起こり、モノにそれを受け入れるキャパがあるため、箔がつく。髭切、膝丸はその典型例。

何故仮託されたのかは再研究の価値がある。研究費ぷりーず!

 

ここから先は駆け足でした。時間がたりない…

再刃とは、もう一回焼いたような黒焦げの炭のようなもの。
夕ごはんに焼いたが食べなかったサンマを、朝温めるのではなく、もう一回焼くようなもの。

刀としての機能はゼロでもその美しさをとにかく少しでも残す、という執念はすごいなぁと思いました。回想で宗三さんは自分の運命を嘆いてたけど、相当愛されてないとそんな事しないと思うよ…

少しでもよいものは残す。残すことで、今後研究され、再発見、確信が得られる事がある。
否定することで廃棄されてはいけない。

刀剣以外のいくつかの「新しいと思ってたけどそんな事なかったー!」て事例が紹介されてました。
「虎徹ってあるけどこれ贋作っすわwwwww」って言われて、雑に扱ってたら真作だった…とか洒落にならないですもんねー

上方は和事、江戸は荒事を好む。刀剣も作風が反映される。
二つ胴は首を落とした死体を二つくくり、それを斬ったもの。
大袈裟も肩から尻に斬る事。
格があり、それによって値段が決まった。

虎徹は荒事の刀、ということでどっしりがっしり、重い感じなんだとか。こんなところにも「上方文化と江戸文化の違い」が…

この辺で講座は終わり。いやー、おもしろかったです。

なお、今回「キョーハクの本気を見た」とか言われてるけど「今回の展示は5%くらいです!本気は2018年にお見せします!」とのこと。

京都国立博物館の金工はなんなの?戸愚呂弟なの?フリーザ様なの?どれだけの力を残しているの…?

粟田口スクールの資料、どんどん知らない人が増えたり「あれこいつどこいった!?」て人もいたり、大変おもしろいです。研究するのは大変だろうけど、楽しむ分には一見の価値有りです。

最古のもの

何故か人が増えたり減ったりしている

後世

原作はキャラの立ち絵だけなのに、いつの間にか家族ができているソシャゲ二次創作のような事に…